医療や介護の現場で毎日のように使われるサージカルテープ。点滴針、あるいはガーゼや包帯を固定したりするのになくてはならないものです。ところが、サージカルテープに含まれる粘着剤の刺激が、肌荒れやアレルギーなどの肌トラブルの原因になることがありました。また、テープを貼り替える際、テープの粘着力の強さのあまり、肌の表面の角質も剥がしてしまい、痛みや肌荒れを引き起こす原因にもなっていました。特に肌の弱い方にとって密かな悩みを抱えていたサージカルテープの世界に、Nittoは初めて「肌に優しい」という新しい価値観を示したテープを生み出しました。
その製品は優肌絆™(ゆうきばん)。医療現場で実際に使っている「むらた日帰り外科手術・WOCクリニック」の熊谷さん(皮膚・排泄ケア認定看護師)は、初めて優肌絆™を使った時の感想を覚えています。
「私が初めて使ったのは1999年。当時は絆創膏の肌トラブルが多くて、敏感肌だった自分の肌で試してトラブルの起こすものは使わないようにしていました。すごく肌に優しいという評判を聞き、実際に試してみると本当に剥がす時に痛くない、これは驚きでした。」
新聞紙に貼った優肌絆™を剥がしても、紙が破れないというデモンストレーションに驚いた熊谷さん。実際に医療の現場で使ってみると患者の方からの反応も「凄いモノに出会った」という感想だったそうです。
「患者の方にも、こんなテープがあったんだ!という驚きがあったようです。優肌絆™は角質が剥がれにくいので貼り直しができます。しかも、痛くない。これは私たちにとっても使いやすいし、患者の方にとっても剥がす時の苦痛が少なく、喜ばしいことでした。私たちの医療現場では99%くらいは優肌絆™で対応していますが、肌トラブルは激減しました。」
このように、優肌絆™の肌への優しさは医療の最前線で活躍するプロの方にも高い評価を得ています。しかし、この「肌に優しいテープ」という概念は、優肌絆™が開発されていた当時のマーケットにはありませんでした。それは、Nittoが創り出した新しい価値観であり、新しい製品だったのです。
優肌絆™を開発・製造しているのは宮城県にあるNittoの東北事業所。肌に優しい粘着剤を開発するきっかけとなったのは、Nittoの独自技術と医療現場の声とが結びついたためです。
1996年頃、当時の衛生材料の開発チームは、Nittoらしい新しいコンセプトの開発テーマを探していました。その時、別の開発チームでは経皮吸収薬を開発しており、その過程で肌にやさしい油性ゲル粘着剤の独自技術を確立したばかりでした。この偶然が後の優肌絆™を生み出すことになります。
実は、その時代の医療現場では、アレルギー源となる天然ゴムを使用しない粘着剤を使ったサージカルテープがありましたが、肌トラブルが完全に無くなったわけではありませんでした。というのも、特に透析のように、繰り返しテープを使用することによる肌トラブルに苦しむ患者の方がいたからです。 この状況を解決するために、経皮吸収薬で開発した油性ゲル粘着剤の技術が医療現場で使われる衛生材料にできないか? という議論が重ねられました。けれども当時は、まだマーケットとして存在していなかった「肌に優しいサージカルテープ」の開発の決定は、実際に売れるのか? マーケットが生まれるのか? という迷いがあり、大きなチャレンジだったのです。
そんな中、Nittoのチーム力を結集し、3年間の歳月をかけて初代「優肌絆™プラスチック」の開発に成功しました。その後も、「優肌絆™不織布」「優肌絆™アルファ」「優肌絆™GS」とラインナップを増やしていったのです。
「ベースとなる粘着剤技術の応用とは言え、製品ごとに求められる機能が大きく異なるため、粘着剤の最適化は開発メンバーと共に数多くの検討を重ねました。課題を解決するために、メンバーは苦労を重ねましたが、技術のブレークスルーを生み出し、それを乗り越えてきました」(古森)
「肌に優しい」という新しい製品の価値観を、医療現場にどのようにしてお伝えするかについてもメンバーは苦労を重ねました。「皮膚の角質を剥がしにくい」特長は、一度皮膚に貼付したテープの表面に付着した角質を染色して当社製品が角質を剥がす量が少ないことを可視化することでわかりやすくしました。新しいマーケットを創り出すということは、製品を生み出すことだけでなく、その価値を伝える手法の開発も必要だったのです。
さて、優肌絆™の肌への優しさを実感していただくために、いくつか実証実験を行ってみました。優肌絆™が、いかに肌に優しいテープかをご覧ください。
柔らかいトイレットペーパーに一般的なサージカルテープと優肌絆™を貼って剥がしてみた実験動画。優肌絆™は、薄くて柔らかいトイレットペーパーでさえ、ほとんど破れません。
薄い玉ねぎの皮も皮膚を模すのにちょうど良い実験材料。一般的なサージカルテープを貼って剥がすと薄皮が付いてしまいました。優肌絆™は、するっと剥がれて皮はそのまま。これも角質を傷つけない優肌絆™を物語っています。
一般的なサージカルテープだと、剥がす時に粘着面に新聞紙の表面がくっついてしまい、紙ごと破れてしまいます。一方、優肌絆™は印字面がくっつくだけで、紙は全く破れていません。
「新聞紙に貼って剥がしても破れないというデモンストレーションは、上市当時から20年経った現在も優肌絆™をプロモーションする全員が使ってます」(古森)
※上記映像は効果効能を保証するものではございません。
製品化を前に、この新しい製品がマーケットに受け入れられるかどうか、開発者たちは不安を抱えていました。そんな不安を吹き飛ばすように、肌への優しいテープは医療現場のプロたち受け入れられたのです。
「臨床試験の段階では、子供の患者の皮膚に優肌絆™が使われたのですが、敏感な子供の肌でも剥がす時の痛みが軽減されて喜んでいただいたという声を聞いたり、透析を受けている患者の方から、これまでにない肌に優しいテープを開発してくれて感謝しますという内容の手紙をいただいたり、私たちが開発した粘着剤によって患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献できたのを実感するとともに、それが我々の大きな励みとなっています」(古森)
患者さんの痛みを減らしたい。そんな開発者の想いは多くの医療、あるいは介護の現場などで現実のものとなりました。そして、肌への優しさの追求は、これからも続いていきます。
「優肌絆™を育てて頂いた患者さんや先の方々、そして当社の諸先輩方に感謝するとともに、その想いのバトンを引き継いだ我々は、これからもさらに多くの患者さんに喜んで頂けるように頑張っていきたいです」(古森)
Nittoが蓄積してきた粘着剤の技術を集めてできている優肌絆™。肌への優しさにこだわり抜いた粘着剤は、医療や介護の現場に、「肌に優しいサージカルテープ」という新しい価値をもたらし、今日もなお、患者さんを悩ませていた肌の痛みを減らすことにつながっています。