グローバルにおける産業エコシステムの中でニッチな市場でトップを狙うという戦略で、5Gから先進的な医薬といった明日の技術を支えるユニークな日本企業がある
スマートフォンに触れたり、テレビをつけたり、車を運転したり、家電を使ったり、目には見えないけれど実は一日に何百回も、ある日本企業に触れているかもしれない。
その企業はNitto。100年以上に渡って人々の生活に快適さ、安心さをもたらすイノベーティブでニッチな製品を生み出している。 Nittoの製品は、エレクトロニクス、自動車、インフラ、ヘルスケアといった様々な業界で、日々欠かすことのできない製品の中に入っている。そして現在このような困難な状況下でも人々の持続的な暮らしに貢献しようとしている。 「直接的ではないですが、世界中のたくさんの人々に快適さや安心を提供しています」Nitto CEOの髙﨑氏は言う。「私たちはB2B企業ですが、世界中の人々がNittoに1日何百回も触れているのです。スマートフォンだけでも、Nittoの製品が10個以上は中に隠れています」 |
では、どのようにNittoは世界の先端を行く製造業の必要不可欠なパートナーになっていったのだろうか。一つはNitto独自の戦略での三新活動というものだ。これは日本語で「San(三)」「Shin(新)」を繋げたもので、新製品、製品の新用途、そして新需要を表すものだ。 三新活動は、新しい技術や創造力によって世界の需要に合わせて新製品を継続的に生みだす取り組みで、イノベーションには決して「終わりがない」という考えを表している。 三新の成功事例の一つは、よくひっつくけれど簡単にはがれる、そしてはがした際には糊残りがないテープだ。この三新事例はきれいにはがれる機能が付加されたテープをその後、キッチンシンクの表面保護、車体輸送時の表面保護フィルムにまで用途を広げた。 |
更にその先の驚くべき展開は、半導体製造プロセスでの用途だった。新しい機能を付加し、ウエハを細かいチップに切削する際の固定用テープとして進化を遂げている。このフィルムはクリーンな環境で使用でき、もちろん糊残りなくはがすことができる。
「このような一つの製品が進化を遂げ、住宅、車、半導体と幅広く用途を広げることを誰が想像できただろうか?」「これが三新活動の力です。」と髙﨑氏は話す。
Nittoには、三新活動の他にもう一つ鍵となる、Global Niche Top™という戦略がある。Global Niche Top™戦略は成長する・変化する市場において自身が強みを発揮できるニッチなエリアに資源を投入する差別化戦略である。グローバルなマーケットシェアにおいてNo.1になることがゴールである。
Global Niche Top™へのひらめきは業界をけん引するBtoCメーカーとのコラボレーションによって得られることもある。次の突破口となる新製品を生み出すためには、お客様の素材や部材への要望や期待を聞くことが欠かせない。
「「こんなものがあったらいいな」とお客様からの要望を受けて、私たちはその要望を超えるものを作って彼らに「こんなものがほしかった!」と言ってもらうんです」と髙﨑氏は話す。
Nittoは社会と共に持続的な成長ができるよう積極的な取り組みを行っている。例えば、Nittoの低VOC両面テープはトルエンや酢酸エチルといった有害物質を使用していないけれど、強固な粘着力のあるテープだ。
この粘着剤はVOC(揮発性有機化合物 Volatile Organic Compounds)を使用せずに作ることによって、大気に有害物質を出さないテープである。Nittoは製品だけでなく、製品の製造工程においても環境に配慮した取り組みを導入していきたいと考えている。
「社会への貢献、それが最優先事項です」「そして、社会課題の解決は企業価値向上とともに進めていく。この両輪を一緒に回していく必要がある。」髙﨑氏は言う。
現在私たちが置かれている状況が歴史的に困難な状況であることは言うまでもない。しかしNittoは100年以上に渡って「変化をチャンスととらえる」という考えを持って成長を続けてきた。
Nittoはこのパンデミックや気候変動といった中でも新たな人々の需要が見えている。Nittoはこれらの変化の早い社会問題にも独自のニッチなソリューションで応えようと努力を重ねている。
特に、Nittoは、戦略として1)戻らない需要2)戻る需要3)伸びる需要に分けることで素早く変わる環境へ対応しようとしている。これは成長の見込めない市場を見極め、成長が見込める分野にリソースを集中させるというものである。
このアプローチは5Gへの対応を見込んで開発を行っているPOFで実を結ぼうとしている。通信インターフェースの分野での成長を見込んで、Nittoは超高速デジタルネットワークで重要な役割を果たすであろうこの製品の開発に取り組んでいる。
POFの強みは柔軟で破損しにくく、ノイズも入りにくい。テレワーク時の円滑なコミュニケーションにはじまり、移動に限界がある状況でも人命を救うことができる遠隔手術など、社会への幅広い貢献が期待される。
「Global Niche Top™を追求していくことでグローバルな競争の中で勝ち進んでいく。どのような変化がやってきてもニッチなイノベーションによる技術で必ず道筋を見つけ、世の中に貢献していく。」と髙﨑氏は話した。