第6章 合成高分子がもたらした転機
長い年月と多くの人々の知恵とで形作られてきた粘着テープは、やがて大きな転機を迎えます。それは、合成高分子との出会いです。19世紀のヨーロッパからはじまった高分子を合成する研究は、粘着テープにまったく新たな機能や特徴を与えることになりました。
合成高分子によって、急速に高度化・多目的化していく粘着テープを追ってみましょう。
合成高分子との出会い
分子量がケタ違いに高い、高分子化合物
粘着テープは、今では数えきれないほどあります。それを可能にしたのが、第二次世界大戦後
ビニル粘着テープ(1)
大量生産時代を予感させた、塩化ビニル樹脂の誕生
合成高分子による粘着テープの第1号は、ビニル粘着テープです。塩化ビニル樹脂は熱でやわらかくなるので
ビニル粘着テープ(2)
合成高分子ならではの問題点
「テープ用のフィルムをつくり、片面に粘着剤を塗布し、可能な限りフィルムを引き伸ばさないようにして乾燥し、
ビニル粘着テープ(3)
開発者を悩ませた「タケノコ現象」
ビニル粘着テープは、電線の接続部分のように凹凸のあるところに適当に伸ばしながら巻き付け
ビニル粘着テープ(4)
超高圧・高圧用に開発された全天候耐性ビニルテープ
家庭用の配線やオフィスの電灯など低圧用のビニル粘着テープは、JIS規格に準じて生産
自己融着テープ(1)
くっつかないけれど、くっつくテープ
くっつかないけれど、くっつくテープ。絶縁テープの中には、こんな不思議なものもあります。
自己融着テープ(2)
電力ケーブルを被覆するために最初に使われたのは、ゴムテープとブラックテープ
そもそも自己融着テープは、どのような背景で誕生したのでしょう。1887年(明治20年)、東京電燈が
自己融着テープ(3)
巻き付けても気泡が入らないこと。これが難問でした
電力ケーブルの接続部を絶縁するためには、テープを何層にも巻き付けて、決められた絶縁厚さにし、
表面保護用粘着テープ(1)
「巻くテープ」から機能を持った「貼るテープ」へ
モノとモノをくっつけたり、貼りつけたり、巻いたり……。粘着テープを使うと、いろいろなことが可能になります。
表面保護用粘着テープ(2)
候補に残ったのは、缶シール用ビニル粘着テープ
絞り加工で使われ、金属の表面を傷つけないためには、テープそのものが柔軟で、しかも十分な粘着力が
表面保護用粘着テープ(3)
このテープを貼ると、より深いプレス加工が可能に
時は、まさに高度成長時代。重厚長大と呼ばれる産業分野が活況を呈し、鋼板、ステンレス板
表面保護用粘着テープ(4)
耐久性があり、きれいに剥がれる粘着剤への改良
不可能とも思われた表面保護用粘着テープの改良は、まず粘着剤から始められ、何よりも耐候性が重視されました。
表面保護用粘着テープ(5)
エレクトロニクス分野でも欠かせないテープ
表面保護用粘着テープは、海外にもほとんど類を見ない製品でした。1967年に輸出が始まると、欧米の鋼板メーカーや
合成粘着剤(1)
粘着テープのメカニズムを革新した、合成高分子技術
粘着テープは、簡単に言うと「布や紙、フィルム(これらを支持体と言います)に粘着剤を塗った」構造をしています。
合成粘着剤(2)
合成粘着剤の主役は、アクリル系ポリマー
合成粘着剤の主役は、なんといってもアクリル系ポリマー(高分子)です。合成粘着剤として開発さ
剥離剤(1)
「貼る」機能を発揮させるために、「剥がす」機能も追求
支持体や粘着剤は必要不可欠な構成材料ですが、粘着テープはこれだけでできているわけではありません。
剥離剤(2)
剥離剤が塗られていなかった、初期のビニル粘着テープ
剥離剤は今ではほとんどの粘着テープになくてはならないものですが、初期のビニル粘着テープには、剥離剤が塗られて
剥離ライナー
高い技術からできている、剥離ライナー
両面粘着テープには、ツルツルした紙がテープとテープとの間に巻いてあります。また、シールや粘着ラベルは、
両面粘着テープ(1)
接着剤と同じ機能を持った粘着テープ
日常的な使い方の中で、粘着テープと接着剤との大きな違いとはなんでしょう。それは、粘着テープが「
両面粘着テープ(2)
両面粘着テープは「縁の下の力持ち」
私たちが一番よく目にする両面粘着テープと言えば、事務や文具用でしょうか。たとえば、
ポリエステル粘着テープ(1)
支持体も粘着剤も合成高分子でつくられた最初のテープ
人類が初めて火を使いだした時、あるいは農耕を始めた時・・・・・・それは、文明を大き
ポリエステル粘着テープ(2)
合成高分子技術の組み合わせで生まれた高性能粘着テープ
ポリエステルフィルムの優れた性質の数々は、粘着テープにも広範囲の可能性を与えました。