第6章 合成高分子がもたらした転機 合成粘着剤(2)
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合成粘着剤(2)何役もこなすアクリル系粘着剤
合成粘着剤の主役は、アクリル系ポリマー
合成粘着剤の主役は、なんといってもアクリル系ポリマー(高分子)です。
合成粘着剤として開発されたものには、ポリビニルエーテルやポリ酢酸ビニルなどもありますが、アクリル系ポリマーこそが、合成粘着剤の本命と言ってもよいでしょう。
アクリル系ポリマーは石油からできたプラスチックで、私たちの身近な所でも使われています。一般によく知られているものは、アクリル板と言われている有機ガラスです。耐老化性に優れており、透明性にも優れたプラスチックで、光や紫外線をガラスよりも良く透過させるため、自動車・飛行機などの風防ガラス、建築材料、コンタクトレンズ、義歯などに使われています。
粘着剤に使われるアクリル系ポリマーも、これらと極めて近い類縁関係にあるポリマーです。
用途に適した機能を付与できるアクリル系粘着剤
アクリル系ポリマーは、アクリル酸を原料としています。アクリル酸が初めて合成されたのは1840年代ですが、粘着剤として広く利用できそうだと認識され始めたのは、それからかなりたった1950年代のことでした。
1960年代になると、粘着剤の中核ポリマーとして活発に開発が進められ、今日の粘着テープの繁栄を築きました。
では、アクリル系ポリマーを粘着剤として使用すると、どんな利点があるのでしょう。
まず、酸化抵抗性が大きいため、非常に優れた耐候性を発揮することです。日光にさらされても黄色く変色しません。無色透明で着色が自由です。油や溶剤にも平気です。なによりも、合成原料の組み合わせにより、粘着剤の用途に適した機能を付与できる長所がありました。このため、粘着テープを思い通りに設計できるようになったのです。
ポリエステル粘着テープを皮切りとして、硬質ポリ塩化ビニル透明粘着テープ、両面粘着テープ、医療用粘着テープ、表面保護用粘着テープなど各種支持体と組み合わせた多くの粘着テープが、アクリル系粘着剤によって実現しています。
粘着・接着技術の機能性の向上は、より高度な特性を要求しており、やがてアクリルポリマー群を超える新規合成粘着剤も出現するでしょう。