第3章 粘着テープ誕生 絆創膏
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絆創膏膏薬から発展した、元祖粘着テープ
粘着テープの量産開始は、1870年代のアメリカ
アメリカの産業革命は、ヨーロッパよりも若干遅れ、1865年の南北戦争以降です。ヨーロッパ大陸を席巻した「工業」という名の新しい生産活動は、アメリカの人々にも豊かな未来への夢を抱かせました。そして、さらに旺盛な工業技術が開花していきます。
こういう時代背景にあった1874年、膏薬の調剤を学んだロバート・ウッド・ジョンソンは、ジョージ・シーベリーとニュージャージー州に工場を設立し、天然ゴムをベースに松脂、植物性充填剤などを加え、常温で粘着性に優れた絆創膏(サージカルテープ)の製造・販売を始めました。従来の絆創膏は使用時に温める必要がありましたが、この製品はその必要がなく、現在の絆創膏の基礎になるものです。
「温めなくても粘着力が得られ、すぐ貼れる」。これは、今日の私たちから見れば当たり前のことですが、この時代になってようやく誕生した技術なのです。
その後、ロバード・ウッド・ジョンソンはシーベリーとのビジネスを解消し、1886年、兄弟でジョンソン・エンド・ジョンソンを創業します。1887の最初の価格表には、すでに粘着テープが掲載されています。また、ペンシルバニア製薬協会1887年版には、同社が、天然ゴムをベースとした湿布薬を製造し始めた内容が記されています。その内容によると、一流のゴム工場の加工設備と技術を持ち、練りロールで布に無溶剤のゴム膏体を塗りこんで製造していたようです。
1890年には、同社から薬品を含まないゴム絆創膏が発売され、外科用テープとして広く活用されました。これは、治療のために牽引したり、止血のためにきつくしばったり、傷口を包帯したりするときに便利で、ヨーロッパにもまたたく間に広まっていきました。
日本でも1911年に竹内化学の竹内荒次郎が、陸軍衛生材料廠(しょう)で働いていた経験を活かして、日本で最初のゴム絆創膏を開発しました。日本独特の和紙を用い、薬品入り粘着剤を手塗りしたものでした。
ドイツでは、皮膚への刺激も考慮した絆創膏が登場
一方ドイツでは、1882年、薬剤師のバイヤスドルフが、ガーゼにガッタパーチャー(天然ゴムの一種)で目止めの下塗りをした上に、ゴム引布用のスプレッダーマシンで液状のゴム膏体を塗布する特許を得ており、1890年には松脂を酸化亜鉛で中和して、皮膚刺激を少なくした亜鉛華絆創膏を開発しました。
こうして、19世紀の終わりまでには、ゴムを塗る技術を活用した絆創膏の量産が、アメリカとヨーロッパで行われるようになりました。