第1章 接着剤の始まり デンプン糊
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デンプン糊日本人にはなじみ深い接着剤
今でも私たちに一番馴染み深い接着剤は、糊
接着剤の歴史を天然アスファルト、ニカワ、漆とたどってきましたが、私たち日本人にとって一番馴染み深い接着剤といえば、糊(のり)でしょう。
稲作文化圏に属する日本では、米は接着剤の材料としてとても身近なものでした。合成接着剤が多く出回っている現代でも、私たちが日常的に使うのは、米などのデンプンでつくられた糊です。特に、紙との相性は抜群です。
昔のご飯は、米を蒸した、現在で言う「おこわ」のようなものでした。これを押しつぶしたものが糊の原形である「続飯(そくい)」です。また、病人用に柔らかく炊いた粥を姫飯(ひめいい)といい、これからつくられた糊を「姫糊」と呼んだりもしました。これらは、平安時代からよく使われていたようです。
最近は少なくなりましたが、年末によく行われた障子貼り。この時に使われるのもデンプン糊です。小麦粉を水で溶かして煮て糊をつくったご記憶、ありませんか? 刷毛で塗りやすく、貼り直しもでき、しかも剥がす時は水で濡らせば簡単に剥がれます。障子貼りには最適な接着剤です。
この他での身近な使用例としては、洗濯糊にもデンプン糊が使われています。
原料として、最近は米や小麦粉以外にタピオカなども使われているようです。
時代劇で、よく浪人が内職の傘貼りをしていますね。これもデンプン糊です。でも、普通のデンプン糊だと、雨に濡れると剥がれてしまいます。なのに剥がれないのは、傘貼り用の糊には、柿の渋が入っているからなのです。
接着剤は、生活文化を写す鏡
接着剤は天然アスファルトから始まりましたが、その後、石の文化には天然アスファルト、木の文化には漆が浸透していきました。また、食文化を見ると、肉食の習慣があるところではニカワが広まり、米中心ではデンプン糊が一般的になりました。
「貼る」「くっつける」という行為は私たちの生活に密着したものであり、その方法も、それぞれの土地柄や生活習慣に根ざしていることがわかります。人々は驚くほど昔から、それぞれの生活様式に合った接着剤を選択し、利用していたわけです。