第4章 工業の世界で マスキングテープ(4)
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マスキングテープ(3)最初の工業用粘着テープ/合理化・効率化の実現
合理化と効率化を願う気持ちが与えた、粘着テープの新たな使命
粘着テープ技術が急速に活発化したのは、1900年代の初め、フォードによる自動車の大量生産が開始された頃からです。
フォードが導入したもっとも革新的な方法は、ベルトコンベアによる大量生産システムでした。その中で、粘着テープは、工業分野で効率化と高速化を実現させるための材料として認められていきます。それを証明したのが、自動車塗装用のマスキングテープでした。
単に美しい塗装を目的とするならば、従来の職人の技術で可能だったでしょう。そうではなく、大量に、しかも高速に生産する必要性が、粘着テープでマスキングするという発想を生み出したのです。
この新しい市場は、1925年に3M社のドルーが自動車専用のマスキングテープを開発してから開花し、1927年にはジョンソン・エンド・ジョンソン社も「パーマセル」ブランドで参入を果たしています。
今でも車両塗装には欠かせないマスキングテープ
マスキングテープがデビューした直後の1929年、アメリカを中心として世界恐慌の時代が訪れました。資本家たちにとって、生産工程の合理化は切実な問題としてのしかかりました。
こうした合理化・効率化への強い要求が、粘着テープの普及にいっそうの拍車をかけました。3M社のマスキングテープの売り上げだけをとってみても、発売10年後には、発売当初(1925年)の10倍にも成長しています。
マスキングテープの誕生は、その後の工業用各種粘着テープの発展をも促していきますが、アメリカでは今でも紙粘着テープの生産量が、他の国に比べて多く、最初に普及したマスキングテープが、いかに人々に深く浸透していったかを象徴しています。
その元祖であるクレープ紙のマスキングテープは、誕生からすでに85年以上が経過していますが、今でも現役です。
コラム:今では種類もさまざま
マスキングテープは、誕生した当時は、紙の粘着テープでしたが、今では、支持体は、紙をはじめ、布、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの種類があります。
色は青、黄色、赤や緑などきれいな色が多いのですが、これは、マスキングが終わると剥がす必要がありますから、剥がし忘れをしないように目立たせるためです。