現場担う2人の社員に聞く
ニッチトップを生む企業風土に迫る
「チャレンジを楽しむ」どう実践?
高機能材料メーカーの日東電工(Nitto)は変化しながら成長する市場を選び、業界をリードするお客様のニーズに応えることで世界シェアNo.1を目指すGlobal Niche Top™(グローバルニッチトップ)戦略を進める。前回はその要諦を髙﨑秀雄社長に聞いた。今回はニッチトップに向けて現場で挑戦する社員の「チャレンジを楽しむ」姿を紹介する。
- 齋藤峰花
- 日東電工 全社技術部門研究開発本部・粘着技術研究センター第一グループ
- 高武哲平
- 日東電工 ヒューマンライフソリューション事業部門・メディカル事業部事業開発部
―― 髙﨑社長から「ニッチトップ戦略はNittoのカルチャーになった」とのお話を聞きました。現場で働くお二人はそれぞれどのような業務に携わっていて、この言葉をどう受け止めていますか。
齋藤峰花さん 全社技術部門で電子機器などに使われる「電気剥離テープ」の研究開発を担当しています。目の前の課題解決だけでなく「この技術にはまだ誰も気づいていない使い方があるのではないか」「この製品の開発で得られた知見を全く違う新製品に展開できないか」などを常に意識しながら研究しています。
そうした発想が自然にできるのは、ニッチトップ戦略が仕事の進め方として根付いているからだと感じます。業界をけん引するお客様から寄せられる課題にいち早く解決策を提示することが、ニッチトップ戦略の要だからです。
高武哲平さん ヒューマンライフソリューション事業部門で核酸医薬関連の事業開発や市場調査、マーケティングなどを担当しています。核酸医薬は遺伝子を構成するDNAやRNAを活用して化学合成で作る医薬品です。従来は困難だった疾病の治療が可能になると期待されています。
ニッチトップ戦略は事業開発の目線でみても重要な戦略です。トップシェアだからこそ最前線の企業との協業が増え、最先端の技術や、市場の変化と今後の見通しなどの質の高い情報に触れることもできます。この戦略がNittoの根幹をなしていると感じています。
若手社員が実践する「チャレンジ」を深掘り
―― 齋藤さんが手掛ける「電気剥離テープ」は、Nittoが市場でトップシェアを誇るGlobal Niche Top™ 製品認定の可能性も見えているそうですね。
齋藤さん 電気剥離テープは、使用時にはしっかり接着しつつ、弱い電圧を加えると簡単に剥がせるテープです。現在では、スマートフォンのバッテリー固定などに使われています。この製品がGlobal Niche Top™を狙えるレベルの事業へと発展した背景には、私が担当した剥離メカニズムの解明も関係しています。
実は「電圧を加えるとなぜ剥がせるのか」という原理は、既存の理論では十分に説明できていなかった分野でした。中途入社してすぐ、上司から「メカニズム解明に加わってください」と言われて、そのときは戸惑いました。粘着技術に関しては学生時代から研究してきたものの、電気化学は全くの専門外だったためです。
でも、これは新しいことに挑戦できるチャンスと感じました。業務の合間を見つけて基礎から勉強し、社外の専門家と議論を重ねました。昨日まで分からなかったことが次々と明らかになる日々は刺激的でした。電気化学が専門の大学教授から「企業の研究でここまでやるのですか」と驚かれるぐらいの理論を構築できましたし、事業部の方からも「メカニズムの解明ができたからこそ自信をもって上市できた」と言っていただけました。
―― 高武さんは「核酸合成用ポリマービーズ」の事業開発にあたってきましたね。
高武 核酸合成用ポリマービーズとは核酸を合成するための工程部材で、合成の起点となる材料です。お客様は、これを用いて核酸合成する企業、例えば製薬企業やバイオテック、受託製造企業などです。
Nittoのビーズが広く採用されている理由は品質が高いというだけではありません。より多くの核酸が得られる点や反応の安定性、扱いやすさを意識した細かな工夫に加え、様々な核酸に対応できる豊富なラインアップが評価され、トップシェアにつながっています。
2021年には核酸医薬初の大型品目が承認されました。当時、他にも大型品目の開発は進んでいて、将来どれだけの需要が生まれるかを読み切ることが事業成長の鍵でした。お客様の開発状況を丁寧にヒアリングしながら中長期の需要予測を立て、必要な供給体制を前倒しで準備することはリスクを伴うチャレンジでしたが、日本とアメリカに新工場を建設し、生産能力を強化しました。
これにより、ポリマービーズの提案はもちろん、核酸の製造から評価までできる環境を日米両拠点をまたいで整えることができました。材料販売にとどまらず、製造まで含めてワンストップで提案できるのはNittoの核酸医薬事業の強みです。
宮城県の新工場では「環境対策でもNo.1を目指そう」を合言葉に、二酸化炭素の排出ゼロ、国内初の水素ボイラー導入など、Nittoの次世代につながる環境技術にもチャレンジしています。2025年度の「みやぎゼロカーボンアワード最優秀賞」を受賞しました。
「あなたはどうしたいの?」を聞かれる土壌
―― お二人の話を聞いていてNittoが「チャレンジを楽しむ文化」を大事にしているのが伝わってきます。
齋藤さん この文化があったからこそ、専門外のテーマでも不安より好奇心を原動力に取り組めました。
新しい知見を共有した際に「応用するとこんな面白いことができるのでは?」と挑戦を始める人が大勢いたことも大きな励みになりました。チャレンジに対して構えすぎず「じゃあ自分ももっとやるぞ」となる連鎖がNittoにはありますね。
高武さん チャレンジして仮に失敗したとしても、そこから何が得られたのか、次はどうするのかという点が重視されていると感じています。社内では「高武さんはどうしたいの?」とよく聞かれます。
齋藤さん 確かにそうですね。上司からすれば自分が言ったほうが早いことってたくさんあると思うのです。でも私から提案してくるのを待ってくれている感じがします。
高武さん お客様からの相談や引き合いに対して社内で検討する際、提案が浅い場合は当然指導を受けるときはありますが、それは健全な姿でしょう。その上で自ら一歩踏み出していくことが、チャレンジを楽しむことや成長につながっていると思います。
新しいことにチャレンジできてわくわくする環境
―― Nittoで一緒に働きたい人のイメージはありますか。
高武さん 変化していくことを前向きに楽しめる人が合っていると思います。私自身も一緒に働いて刺激を与えてもらえる人がいたらありがたいですね。
齋藤さん 「本質的な課題は何か」を考え続け、チームで議論しながら次の一手を考えていける人と、新しい価値創造に取り組めたらうれしいです。
高武さん 齋藤さんのような研究者が技術開発で「0から1」を生み出すことで、私のような事業開発の部門が「1から10」に広げることができます。また、それとは逆に事業開発が捉えた市場やお客様のニーズから技術開発を進めたりと、バトンをつなぐように会社全体が大きなチームとして動いていると思います。
―― お二人の話をうかがって、このチャレンジを楽しむ企業風土こそがニッチトップ製品を生み出し続けるのだと感じることができました。
高武さん Nittoのもう一つのいいところは、短期的成果だけでなく、5年後10年後に意味があるかどうかを議論できるところです。新規技術開発、工場への設備投資、環境対応などもこれに該当します。この時間軸もNittoの強みといえますね。
齋藤さん 業界トップレベルのお客様からの課題は本当に難しくて、既存の技術だけでは到底解決できません。だからこそ研究者・技術者としては常にイノベーションを起こしていかないといけないという気持ちにさせられます。新しいことにチャレンジできてわくわくする環境です。