清潔な水は私たちの生活に欠かせません。しかし、水に関係する問題は人口増加に伴う水消費量の増加、気候変動による水の枯渇、汚染など、無数に存在し、世界のあらゆる地域で水不足が深刻化しています。太平洋に面したチリのベッドタウン、トコピヤも、そういった危機に直面しています。
トコピヤ市では住民の生活用水を周囲の山々の地表水から得ていましたが、持続可能な水源を必要としていました。山々の生態系は崩壊の危機的状況で、高雨量、急勾配により、土壌の侵食による被害を受けやすく、土壌の侵食が地表水の汚染の主な原因でした。トコピヤでは安定した飲料水を求める声が挙がり、これに対応するためにNittoの革新的なHYDRANAUTICS™膜技術を利用した海水淡水化プラントが建設されました。トコピヤは、チリで初めて、より持続可能な水消費アプローチを取り入れた都市になりました。
海水淡水化は、溶解した塩やその他のミネラルを海水から取り除くプロセスですが、塩は非常に腐食性が高く、脱塩装置を損傷させてしまいます。
海水淡水化に使用される逆浸透システムは、外圧を利用して膜に海水を通すことで、塩分濃度を下げます。海水には高濃度の塩分が含まれるので、適切に海水が膜を透過し、塩分除去される為に、より強い圧力が必要になります。強い圧力を生み出すには通常、多くのエネルギーが必要となり、膜により大きな負荷がかかります。
Nittoは高性能膜の分野で豊富な実績を誇る膜技術のグローバルリーダーです。海水用途向けに特化した逆浸透膜SWC™を開発してきました。中南米地域の販売担当ディレクター、レナート・ラモスは、「トコピヤの希望に合致した、高流量、低エネルギー、そして低透塩率という独自の仕様です。」として、プラントのニーズに合うSWC6-LD膜を推奨しました。
この膜は最適な選択であったため、トコピヤはすぐに効果を享受することが出来ました。
トコピヤ周辺の山々の生態系への負荷低減に加えて、トコピヤの海水淡水化プラント用に構築されたシステムは、気候に依存しない飲料水源となり、地域の現在と将来のニーズを満たしています。淡水の生産量は毎秒およそ78リットルに達し、これは1日当たり648万リットルの飲料水を生産するのに相当します。この海水淡水化プラントは、トコピヤ市の約2万5千人の住民すべてのニーズを満たすことができるのです。
水源としての海水淡水化プラントの持続可能性については、プラント建設前に評価を行いました。エンジニアリングプロセスの一環で環境調査を実施し、HYDRANAUTICS™膜技術を利用した海水淡水化による環境負荷を判断しました。
このプラントは環境保護を目標としており、淡水化プラントによる環境への悪影響の低減、特に海に排出される塩水による環境負荷の低減について綿密に評価しました。海流の挙動をモデル化し、できるだけ速やかに排出塩水を希釈する最良の方法を見極めました。そしてこのプラントでは、海洋生物の保護のために、海洋生物が棲む環境と同じ水質を保全する方法を生み出すことに成功しました。
淡水化プラントの持続可能性の利点に加えて、経済面では、プラントの開発に関連する作業として、建設関連作業の現地契約で460万米ドル余りの経済効果をもたらしました。さらに、地域との持続的な対話を実施する協会、「グッドネーバー・ワークテーブル(Good Neighbor Work Table)」が設立されました。同協会は投資資金、取引開発プログラム、および淡水化水生産に焦点を当てた環境教育活動の形で、地域に21万米ドル余りの寄付を行いました。
Nittoの献身的な取り組みは、製品の製造と販売をはるかに超えた領域に広がります。Nittoは革新的なアイデアを通じて、お客さまの役に立つよう徹底して努めています。トコピヤ市に持続可能な水供給を実現したNittoの取り組みは、ソリューションを提供する当社の情熱の一例にすぎません。Nittoは、社会にCreating Wondersをもたらす、持続可能な革新的水供給ソリューションをこれからも開発していきます。HYDRANAUTICS社に関する詳細は、同社ウェブサイト( www.membranes.com)をご覧ください。