ブックタイトルNittoグループ統合報告書2019

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概要

Nittoグループ統合報告書2019

私のCTOとしての役割は、事業部とR&Dも含めたコーポレート部門で培ってきた自身の経験を活かすことにあると認識しています。すなわち、R&Dで生まれた技術を確実に新事業へつなげること、そして適切なタイミングでお客様に価値をお届けすることです。かつては、Nittoグループの強みを活かした製品がさまざまな事業分野で高いシェアを確保し、これが新たな製品の創出につながる好循環を生み出していました。しかしここ数年は、事業のポートフォリオが特定の分野に偏り、その動向に大きく左右される状態となっていたのです。この状況を受け、私は製造プロセスや特許といったインタンジブルアセットに着目し、事業の安定成長に向けた改革を実行しました。1点目は、プロセスエンジニアリング機能の強化です。新事業の立ち上げには、R&Dで生まれた技術をお客様へ安定して提供するためのプロセス開発が不可欠です。そこで、全社技術部門内にも担当部署を設け、より幅広い分野でスムーズに新事業を立ち上げられる仕組みを構築しました。2点目は、知的財産マネジメントの強化です。事業部門、全社技術部門それぞれに存在していた知的財産部門の統合とNittoが保有する知的財産権の可視化を進めました。これからは、インタンジブルアセットの活用で既存事業の価値を長く維持させ、幅広い分野で新事業を創出することでNittoグループの安定的な成長を実現します。事業部とコーポレート部門、双方の経験により見えた方向性こうしたNittoグループのインタンジブルアセットを価値へと変える仕組みの源流は、私が光学フィルム関連事業部の責任者だった2009年に遡ります。当時、液晶テレビの表示に不可欠な材料である光学フィルムのビジネスが、液晶テレビの急速なコモディティー化の波に巻き込まれていました。私たちのお客様である液晶パネルメーカーは、苦戦を強いられており従来と同じような生産方法では事業が成り立たなくなる恐れがありました。そこで私たちは、これまで別々の会社で行っていた生産プロセスを、ひとつの大きなプロセスにまとめることで、ロスを削減するだけでなく在庫管理も容易になるのではないかと考えました。この考え方から生まれたビジネスモデルが「ロールトゥーパネルR」です。具体的には、これまでNittoグループで液晶用光学フィルムを製造・加工し、お客様が組み立てを行っていた生産プロセスを、お客様の組み立てプロセス内に光学フィルムの加工設備を導入することで、現地で製品の製造から組み立てまでを行えるように変更しました。そして私たちはこのビジネスモデルを知的財産権で保護するために、関連する特許を権利化しました。さらに、これらのメリットを私たちとお客様だけで独占せず、液晶パネル市場全体でも享受できるように特許使用の対価を受領する仕組みを始めました。その結果、「ロールトゥーパネルR」が業界標準プロセスとなり、Nittoグループが行う事業内容が大きく変わりました。現在さらなるインタンジブルアセットの活用を目指し、保有している知的財産権の価値を分析し、知的財産権の行使、他社への売却などに加え、外部から獲得した技術とNittoグループの保有する技術の融合による新しい価値創出に努めています。例えば核酸医薬開発では、Nittoグループが保有するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の技術と外部から獲得した核酸技術を融合させ、製薬メーカーにライセンス提供しています。また、長年培ったエンジニアリング力のサービス化の例として、液晶パネル用の光学フィルムを安定的に量産する私たちのプロセスエンジニアリングを、海外の新規参入メーカーへ技術支援という形で提供しています。これらの事例のように、インタンジブルアセットを積極的に活用することで、事業の安定的な成長へ貢献していきます。インタンジブルアセットを活用することで、成長に貢献CTOが語るR&D戦略インタンジブルアセットの活用による事業安定成長に向けた戦い方インタンジブルアセットの価値極大化~知的財産権の可視化~公開特許数外部からの導入2,016件※2018年度Nitto保有知的財産権11,600件保有知的財産権の可視化(棚卸し)権利行使他社への売却権利放棄業績(利益)への貢献戦略インタンジブルアセット(無形資産)を積極的に活用しNittoグループの継続的な成長に貢献するR&Dを目指します代表取締役 専務執行役員 CTO全社技術部門長梅原 俊志特定事業の動向に大きく左右されるここ数年の戦い方事業価値の維持と新事業創出で安定成長へこれからの戦い方年度営業利益年度営業利益インタンジブルアセットを最大活用事業価値を長く維持スムーズな新事業の立ち上げ29 Nitto Group Integrated Report 2019 30